#就活をもっと自由に、への違和感を証明しよう。
賛否両論を巻き起こしているP&G社の #就活をもっと自由に キャンペーン、である。
このキャンペーンはP&GとPR会社、就職支援会社のワンキャリアさんがタッグを組んで行ったようなのだが、キャンペーンそのものから、その後の盛り上げ方について得体の知れぬ違和感を感じたのでまとめてみようとおもう。
【1】キャンペーンそのものへの違和感
就活中の髪型に関する#1000人の就活生のホンネ | パンテーン (Pantene)
このキャンペーンを発端に #就活をもっと自由に、というキャンペーンが展開されている。
まず一番筆者が違和感を感じたのは、肝心の学生が置いてけぼりにされていないかということだ。
確かにアンケートの中に、自分を偽った経験がある81%、髪型や服装に違和感71%という結果が乗っている。
ただし、学生にとっての「自由」はあくまでも手段であり、目的は「行きたい企業の内定をとること」だろう
偽った経験も、服装に違和感も感じるけど、内定取れればなんでもええわ!が学生の本音ではないのか?
だとするとここで、誰のために、何のために自由にすべきかという疑問が生じる
上の文脈で捉えると、自由とは学生にはあったほうがいいが、そこまで重要なものでもないのではないか?(アンケートで不満がありましたかと聞いたらこう出るのはあたりまえだろう)
※ここでは自由=偽らないこと or 服装・髪型の自由と定義する
以下、仮説と意見だ。
1)自由でないと内定が取れない?
それはない。なぜなら「自由でない」条件下でも内定を取っている人がいる
2)自由でない(偽った)就活をして内定もらっても相性がわからない
これは確かにそうだろう。ただ学生本人がそう思うなら、自分が偽らなければいいだけの話だろう。それで落ちたら、相性が合わなかったということがはっきりしていいだろう。
3)"行きたい憧れの企業"なのに、偽らないと入社できなそう
それは貴方にとって行きたくない企業じゃないか?
4)自由なら受かるのに
そう思うならやってみればいいと思う。いい結果になることもあるだろう。
5)同じ髪型とか可愛くない!スーツあちーーー!!なんでスーツなんだよ
この感情論がむしろ一番共感できる。確かに暑いしオシャレはできない。内定を取れない理由を自由に置いてない分、一番気持ちいい。
2〜4に共通して感じる違和感の正体はこれだ
「偽るかどうかを決めているのは自分だ」
"行きたい企業"に入るためには偽らないといけないんです!だとしても、そうまでして、行きたい企業に位置づけているのは自分だろう。このキャンペーンと一連の流れをみると忘れそうになるが、日本は資本主義なのだ。企業という買い手(総合年収にしたら3億以上)が、学生という売り手から人的資本を買っているのだ。ならば買い手のニーズに合わせて、偽るも偽らないも、自分をどう売るか(あるいは売らないか)という戦略は個人に委ねられているはずで、誰に強制されたものでもないはずだ。
逆に、あえてビジネスライクな言い方にするが、企業からしたら高い買い物なのだ。そして企業は本業で利益をあげるための資本市場で凌ぎを削っており、そこで勝ち抜くために労働市場から労働力を調達しようとしている(勿論個人の欲求にも答えないと、すぐに労働力は損なわれてしまう)。仮に、その企業のビジネスを伸ばす人材が「真面目でコツコツやめない人材」だったとしよう。そうしたときに、面接にスーツで来て、ちゃんとした髪型をしていて、人の意見に合わせられる(偽ることができる)マナーのいい子を採用したいから、服装や協調性を見る。という選考をしていたとして、誰がこれを否定できるのだろうか?勿論、これじゃ企業は伸びないとか、採用できないとかいう意見はあるだろうが、それは買い手の意思決定の問題で外野がやんややんや言う問題ではない。
「偽らざるを得ないんです」という事例もあると、このような記事も紹介されたが、仮に企業が就職浪人という事実を嫌がったとしても、それは残念ながら企業の勝手だし「無数にある企業の中から、そこに受かるために留年を選んだ」のは自分自身だ。また後述するように、私が体裁をあまり気にしないベンチャー企業の採用担当者なら、凄く優秀だと面接で感じた就職浪人生と、そうでもない就活生なら前者を選ぶだろう。この事からも、偽るかどうかは、選ぶ企業と、自分の実力による結果として捉えるべきだと思う。
長くなってしまったので、ここまでをまとめるとこうだ。
- 学生が得たい内定と自由には関係がない
- 学生にも選択の権利はある
- ただし企業にも選択権はある
そして矛盾するようなのが、偽ることを選んでいる学生こそ、本当の意味で偽らない(後述する実力をつける)ほうが内定を取れる可能性がある。必要なのは自分の実力と勇気だろう。このキャンペーンに乗っかってそうだ私服だ!とか言ってる暇があるなら本当この本でも読めば自分の動きは180度変わるだろう。
【2】ワンキャリアQ&Aに寄せられた質問への違和感
上記までなら、筆者はP&Gのブランド戦略に舌鼓をうってもいいくらいだった。ただし、本記事のきっかけでもあるのだが筆者も寄稿をしているワンキャリアというメディアのQ&Aでこのような質問がされたのだ。ワンキャリアさんにはお世話になっているし、めいこさん、寺口さんのtweetは共感できる部分も多い。だからこそ余計に違和感を感じてしまった。
質問に答える前に一言いわせてください。
— たなかけんじ@就活&子育て (@tamaplasyukatsu) 2018年10月1日
「偽らざるを得ない」という表現が嫌いです。
何のために「偽らざるを得ない」のかをはっきりさせた方が良いと思います。...#ワンキャリQA https://t.co/ECVSxGRtgl pic.twitter.com/HCLJjGznVz
偽らざるを得ない就職活動?
上記の通り、「意中の企業に入るために偽ることを選んだ就職活動」ではないかと空目したが、どうやら違う。Twitter上で色々やりとりはあったのだが、それに対する編集部の方(@telinekd)の意見はこうだ。
おそくなりました。本質的なご指摘有難うございます。
— 寺口 浩大[Kodai Teraguchi] 🌐✴︎ (@telinekd) 2018年10月1日
偽らざるを得ない
この表現で出現する人は2パターンに分かれると予測していました。
1. 構造に対する問題提起だと考えて、提言やアクション表明をする人
2. そうだそうだと乗っかって文句を言う人
今回は「世の中全体で」アクションを
続
継続させることに重点をおきました。
— 寺口 浩大[Kodai Teraguchi] 🌐✴︎ (@telinekd) 2018年10月1日
その際に、最もやってはいけないのは、全体最適を考えて表現をマイルドにすることだと考えています。
マイルドにすると1.のアクションのクオリティ平均が下がり、2.の発信内容も主張のない表面的ものが増えます。
もちろんミクロで見れば
偽らざるを得ないという表現は、甘やかしや他責を助長するように見えることは理解しています。
— 寺口 浩大[Kodai Teraguchi] 🌐✴︎ (@telinekd) 2018年10月1日
ただ、物事に対する見方、考え方別にアクションと文句がわかりやすく別れるという意味では
アクションを起こす仲間を集め継続するうえでこちらの方が適切だったかと
シンプルに言うなら、就活を自由にするためのアクションを「偽らざるを得ない。」と尖った表現(マイルドにしない)にすることで生みやすくしたんだ。ということだと解釈をした。(違ったらご指摘いただきたい)
これに対して、筆者が感じた意見はこれだ。
1)構造に対する問題提起は誰のためなのか?
【1】で述べたように学生が求めているのはマッチする企業への内定で、自由ではないはずだ。自由がない!という構造は誰の何にとって問題なのだろうか?
2)アクションを促すためなら表現は自由なのか?
確かに表現の自由は保証されている。なのでこれは倫理観の問題なのだが、正直この発言をみて、僕は怖さを感じた。気分を害したら申し訳ないが、思い出したのは東日本大震災後に「放射能がくる」という表紙で大炎上したAERAだ。繰り返しだが、表現の自由があるので、倫理観の問題だが「偽らないと受からなそうだったから偽ったという解釈」を「偽らざるを得ない」と断言してしまうように、事実でないものを、表現で煽ることには強烈に違和感を感じるのだ。ポジショントークには筆者も賛成だが、片方の側面しか敢えて見せないのはポジショントークでも何でもなく、個人的には煽動だと思う。
※賃貸と分譲のメリット・デメリット両方を上げた上で、僕は分譲=ポジショントーク
※家賃が持ったいない!分譲だ!= 煽動
3)就活生をマイナスに導く可能性すらある
また影響力の低い個人ブロガーならまだしも、ワンキャリアさんのように学生から指示を受けているメディアがこういう表現をすることで、「偽らざるを得ないのか、、、」という編集部とは裏の解釈をしてしまうことを、どうして置き去りにしてしまったのだろうか。。仮にコレを表面的に見て他責にした学生が、自分を偽り、ただ自由にしろ!と声をあげるだけの学生になっても、それは2)にあるようにポジショントークだから、そういう人が出ても仕方ないと済ませるのだろうか?
またも長くなったので第2部に1部の意見をまとめるとこうだ。
- そもそも自由を獲得する動きが本質的に学生と企業のためなのか疑問
- 「偽らざるを得ない」というのは事実ではない。事実偽ってない人もいるし、偽った人も自分の判断
- その事実でないことをアクションを促すために断定で表現
- その結果、勿論マイナスにふれる人も出る
【3】じゃあどうすればいいか?筆者にできることは?
上記やり方にはおそらくどれだけ説明されても納得はいかないが、学生が健全な競争を勝ち抜き行きたい企業にいければいい、というのは筆者も一緒だ。だとしたら学生は何をすべきなのか?自由を獲得する自由民権運動か?絶対に違う。
実績・実力をつけること
繰り返しだが、企業がほしいのは自社を持続的に稼がせてくれる人だ。だとしたら欲しいのは、一定期間辞めずに売上伸ばしてくれる人、だ。ならばやることはだたひとつで、実績と実力をつける以外にない。その結果として実力があるなら内定をもらえて選ぶ立場になり、自由を獲得できることは往々にしてあるだろう。
では脆弱なツイッタラーの僕には何ができるか?その「正しい実力」をつけてもらう支援くらいだろう。
キャッチーな感じにしようと思ったら一部評判が悪いがw、恋愛工学のテクノロジーはそのまま就活に応用できると思い書き始めたのが就活工学だ。
そして本記事を見た編集部のめいこ氏(@meiko_oc) よりお声がけをいただき、ワンキャリアさんのメディアでも、既存の仕組みに対して不満を言う学生でなく、不満をいいつつ、自分が勝ち抜くための技量をつけてほしいと思ったので連載をもたせてもらうことにしたのだ。
大変長くなったが、少なくても筆者は、自由民権運動ではなく、実力をつけて内定を勝ち取る人を増やしたいなと思っているし、勝ち抜く術は実力とテクノロジーしかないと思っている。既存の仕組みにNoを唱えるのも自由だが、少なくてもそれは貴方の内定とは直結しないことには注意が必要だ。
そして、最後に一言だけ言いたい。
世の女性に向けてイケメン差別反対運動をして僕をモテるようにしてほしい。
以上。
<補足>10/3 10:00
少し勘違いを生んでしまっているようなのだが、【1】の就活に自由を、だけなら筆者は賛成はしないが、反対もしない。内定をとることと自由は関係ないと思うが、自由を唱えるのは自由だからだ。
つまり、今の世界の総論とは「就活も、服装も、髪型も自由にすべきなのは、わかっているけど、誰からどう変わればいいのか、わからない」ということなのだ。