僕はネットプロテクションズの採用を証明しようと思う。
※本ブログは就活生と企業の間の情報の非対称性を悲しんだ筆者が趣味の一環として企業を主観で分析する記事です。そのため、基本的には筆者が実際に肌感を持っている企業を対象に主観をふんだんに込めて書いていることをご了承ください。
"完璧な企業などというものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。"
風の唄を聴け/村上春樹著より一部編集
┃つぎのアタリマエをつくろう
新しいコンテンツに挑戦する本企画の初回は、つぎのアタリマエのつくろうでお馴染みのネットプロテクションズ。BtoBtoCのビジネスながらITベンチャー採用界隈では人気企業の1つです。詳細な分析はこの後しますが、いいから自分に向いているかどうか教えろよ、オラ!というせっかちな君に結論から。
<こんな君にオススメ>
- 派手ではなくても確かに便利な事業を作りたい人
- 手堅く勝てる領域のビジネスを作りたい人
- 安定した収益があり、経営資産がある会社で新たな事業に挑戦した人
- 地頭が良い人
- 気持ちの良い、優秀な社員と働きたい人
- キングダムでいうと王翦が好きな人
<こんな君には向いていない>
- 1勝9敗でいいじゃんスピード重視で事業を起こしたい人
- 儲かる市場優先で事業起こしたい人
- コミュニケーション力抜群、営業なら任せておけ君
- 考えるより行動派の君
- 外コン行きたい、人は論破してナンボや君
主な理由は以下の考察を読んで欲しい。
┃会社立上げ時にはアタリマエでなかったこと
現在の主力事業である"NP後払い"は、普段の買物では商品を見てからお金を払うのに、なぜネットショッピングではそれが出来ないのか、という日常の疑問から生まれた。
そして驚くべきはその何気ない日常の「不」を、周囲からの「実現不可能」という評価にめげずに形にし、1億人が利用し、流通総額1,400億円まで仕立てた挑戦心と忍耐力にあると思う。(参考:BUSINESS|ネットプロテクションズ採用サイト)
この背景と成長ストーリーからも「勝てる領域を見つけ、徹底的にやりきる」企業文化を感じられる。キングダムで言えば柴田社長は「私は"絶対に勝つ"戦以外は興味がない」という王翦タイプと推測する。(←知らない人はそっと読み流してほしい)
┃何をやっている会社か?何がアタリマエになったのか?
決済という領域は本ブログの想定読者の就活生にはわかりづらいかもしれないので、ネットプロテクションズの主力事業である"NP後払い"をちょっと詳しめにピクト図にするとこんな感じだ。
※ネットプロテクションズサイトを参考に筆者作成
要するに購入者のネットで商品も見えないのに先払いなんてちょっと不安、クレジットカードは使いすぎちゃうからなんか抵抗が…という不安を商品が先に届くという流れにすることで解決しているのだ。
逆に販売者側には、後払いの実施による債権回収リスクの担保(与信担保)と、新規顧客の獲得という価値を提供している。
┃アタリマエになった後払いサービスの現状の収益性と今後の見通し
どれくらいアタリマエになったのかというのを見ると年間3,000万人が利用するしているとのことなので、日本人の4人に1人が使うサービスとして普及しているようだ。
次に収益性の観点からビジネスモデルの秀逸性を見てみても、
一言でいうなら美味しいビジネスというほかない。
2017年で見ると売上88億、粗利10億とのことだ。
サイトを見ると正社員が約100名、公開されていないが人件費や家賃等のコストも含めて1人平均コストが600〜700万くらいだとすると販管費が6〜7億円ほどで2億〜3億円ほどの営業利益が出ていることとなる。(ただし正社員以外のCS的な要素を外注しているようなので実際のところ営業利益はさらに低くなると想定)
特筆すべきは販売者側は一度NP後払いを導入すると解約するコストが非常に高い。
属にいうスイッチングコストというやつだ。なので、解約が非常に起こりづらいと想定できる。そのため、営業マンを増やさなくても、獲得した分が積み重なる美味しいビジネスモデルを構築しているのだ。
さらに、これにEC市場そのものの伸びが後押する。
http://www.meti.go.jp/press/2017/04/20170424001/20170424001-2.pdf
2016年度でみると総務省発表の流通額が15兆、NP後払いの流通額が1,400億なのでEC流通額におけるNP後払いの利用率は約1%とそれほど高いシェアを占めているわけではない。(ただし同上の総務省の発表によると複数回答可のアンケートでコンビニエンスストアでの支払い希望は36%と3人に1人以上いるようなので、やや1%というのは少ないようにも見える)
しかし2017年のEC市場規模が2015年から2016年と同様の110%成長を見せたとすると、16兆円のEC市場となり、シェアが仮に同様の1%だっとしても1,600億の流通額
に6%の手数料で100億近い売上、12億ほどの粗利が創出できる。
(あまり関係ないが売上=流通総額×手数料率だとすると、売上が88億、流通総額1,400億なので企業からの手数料率は約6%ほどと逆算できる。)
細かく計算したがつまるところ、市場も成長していて、一度導入されたら解約されにくい(シェアが奪われにくい)美味しい事業と筆者は見立てている。
※NP後払いの導入企業例や競合となるGMO後払いの事例を比べてみたが、
2つの決済システムを並列して使っている企業も見受けられなかった。
┃つぎのつぎのアタリマエを作れるか??
ここまでは良い点が目立つが、同社の今後の課題はなんだろうか。それは、NP後払いの次のアタリマエとして何を生み出すか、という部分ではないかと筆者は着目している。
採用サイトでも明示されているが、ここまで述べてきた安定的な収益性が土台にあることに加え、何よりも年間ユーザー3,000万(日本人の5人に1人?)の購買データを含む個人情報をストックしている。というのが最大の経営資源になる。
この資産をどう調理するか、が今後のアタリマエの鍵となるのではないだろうか。
「会員制ポイントサービス」と位置づけられている、フフルルポイント - お得に貯まる使えるポイントサイトや「WEBマガジン」フフルルマガジン | 日々の彩り、モノとの出会いが既に関連事業で行われているが、どちらも収益の柱としては育っていないように見える。会員サービスはユーザーの粘着性を高める位置づけとも考えられるので、直接的な収益は見ていないかもしれない。また後者のフフルルマガジンは運用がストップされたようだ。冒頭に書いているが「完璧な企業というものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね」ということで、色んな領域に挑戦するならば失敗はつきものだ。
またもう一つ筆者が気になるのが購買者のニーズがどこまで存在するのか、という点だ。というのもこれは個人の感想なのだが、基本的にECでの買物をする場合、クレジットカード全てが済むし、今後は仮想通貨での決済というようなものも出てくるだろう。その中で、「わざわざ後払いでコンビニに行って支払う」という消費者の心理が私には掴めていないのだ。事実利用者がこれだけ多いので、あくまでも個人の感想なのだがそこは個人的に不透明感が残る。
┃どんな人におすすめでどんな人には向いてない?
やっと冒頭とリンクさせられるのだが、ここまでじっくり読んでくれた読者は、これまで同社が、ちょっとお固めに見える決済という領域にトライし、着実に高収益モデルを実現してきたことがお分かりいただけたと思う。
ここが同社の最大のアキレス腱であり、骨のある学生からしたらやりがいのある部分と感じるのではないだろうか。
なのでこのような学生には向いているのではないかと冒頭で記載した。
- 派手ではなくても確かに便利な事業を作りたい人
- 手堅く勝てる領域のビジネスを作りたい人
- 安定した収益があり、経営資産がある会社で新たな事業に挑戦した人
ちなみに個人的にはメディアや広告領域が好きなので、
購買者から他社が集められない口コミを集める口コミメディアや、
販売者の売上を伸ばしつつ自社の決済手数料を伸ばすマーケティング支援、
ビッグデータをサードパーティに販売するあたりに興味がある。
(余談だがこう考えると同社の採用インターン等は非常に設計しやすい)
少し話がそれたが、逆に「決済」「Fintech」「BigDate」という領域から軸足を移すことはほぼないと考えられるかつ、それほど多くの事業を一時に立ち上げている様子でもないので、
(正直もう少し色々トライできるのではないかと思ってしまうほどだ)
- 1勝9敗でいいじゃんスピード重視で事業を起こしたい人
- 儲かる市場を見つけて事業起こしたい人
- 考えるより行動派の君
上記のような例えばCyberAgentやDeNA、Recruitの特性が好きな人には向いていないと考える。
また少し前の社長のインタビュー記事で語られていたのは、営業も外注し、正社員には企画職を求めていくとのことだったので、
- コミュニケーション力抜群、営業なら任せておけ君
営業が得意な学生が力を発揮できるシーンは少ないように思う。
┃どんな人達が多い?
ここは主観でしか語りにくい部分なのだが筆者が接したことのある同社の社員の印象を一言でまとめると「いい人かつクレバーな人」という印象だ。
いわゆる体育会系の熱さが前面に出ているわけではないが、
みんな凄く接しやすいいい人だ。
「いい人」というのはチープなようでいて、
チームで協力して行う仕事においてはむしろ必要条件となる。
また物事を俯瞰して捉えて適確に判断をするクレバーさを感じる。
キングダムでいうと蒙恬のようなタイプだろうか(しつこい)
ということで、これにて、だいぶ長くなったが本音の企業研究第一弾は校了となる。
もし自社の記事を掲載してほしい、あの企業を知りたいというような声があればTwitterのDMかメールアドレスに送ってほしい。
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